古沢岩美

美術年鑑 2015年 物故欄掲載
古沢岩美（ふるさわ・いわみ、1912年生〜2000年没）は、佐賀県生まれの洋画家で、岡田三郎助に師事し、戦前より長崎アトリエ村にて前衛美術に傾倒した。1938年の独立美術協会展で注目を集め、同年創紀美術協会を結成、解散後は美術文化協会に参加し戦後も活躍を続けた。戦時中の従軍・捕虜体験を経て、戦後は社会批判や戦争体験を主題とした重厚な作品を発表、挿絵では『千夜一夜物語』や『カザノヴァ回想録』を手がけた。1975年には山梨に古沢岩美美術館が開館、1994年には佐賀県鳥栖市から市民栄誉賞を受賞。作品は戦争と社会を見つめた「時代の証言」としての意義を持ち、エロティシズムを「不易への挑戦」として取り上げる独自の芸術観が貫かれている。
古沢岩美「キャフェの女 於パリ」油彩 6号 1961年作
《キャフェの女 於パリ》（1961年）は、古沢岩美による油彩作品で、洗練された色彩と静かな構成の中に、女性の存在感を印象的に浮かび上がらせた一作です。青いヘアバンドと衣装に身を包んだ金髪の女性が、カフェのテーブルで両手を穏やかに組み、視線を外に向けてじっと座る姿が描かれています。

彼女の前に置かれた赤いワインのグラスや、手元で輝くブレスレットが、作品全体にほのかな緊張感と物語性を与えています。背景には、ぼんやりと描かれた複数の人物の姿があり、パリの街角にある一瞬の情景を静かに映し出しています。古沢の特徴である明快な輪郭線と装飾性のある色使いが、女性の姿を際立たせると同時に、内面的な静けさや都市生活の孤独感をも感じさせます。本作は、戦後日本の洋画界において独自の女性像を追求した古沢の美学が結晶した、詩情と洗練が共存する秀作です。

真作
タイトル： 「キャフェの女 於パリ」
制作年： 1961年
技法： 油彩
作品寸： 41 × 27.3 cm 　　 6号
作品状態： 良好
額寸： 55 x 41.5 cm 　　豪華額装
額装状態： 少傷 有

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